No.04688 22.01.19 怪談

幼い頃、怪談を聞くのが好きだった。
あの、怖くてぞわぞわする感覚に酔った。
兄がよく体験談をしてくれた。
それを父に話したことがある。
「純ちゃん(兄のこと)こんな怖い経験したんだって」
兄が嘘をつくとは思えなかったので、その体験はすべて真実だろうと信じて話した。
すると父がこう言った。
「僕も一つだけ、僕の父さん、ようちゃんにとってはおじいさんだな、から聞いた怪談があるよ。聞く?」
もちろん聞いた。
祖父は戦前、樺太の真岡に住んでいた。
そこに知り合いの老婆がいて、その老婆は不思議な能力を持っていると噂されていた。
その老婆があるとき病気になり、町外れの病院に入院したそうだ。
祖父はいつか見舞いにと思っていたある日、夜に厠に行った。
いまでいうトイレだ。
当時のトイレは汲み取り式だから匂う。
母屋から少し離れたところに作られていた。
厠で用を足し、出てきて水道で手を洗おうとすると、水道が不思議な音で唸りだした。
驚いて様子を見ていると、震える水道の蛇口から水煙のようにして、あの老婆の顔が現れた。
驚いた祖父は「何をしている」と怒鳴ると、老婆はこう言って消えた。
「退屈だからねぇ」
翌日、町外れの病院に老婆に会いに行った。
すると老婆は祖父の顔を見るなりこう言った。
「退屈だからねぇ」

No.04686 22.01.17 ブラバンの秘密

「聖なるもの」に向き合ったときの感覚をヌミノーゼといい、その感覚がしたときのことを思いだしているが、本当にこれもヌミノーゼと呼べるかどうかは判断が分かれるところだと思う。
でも、僕の感覚はそうだと伝えてくれているので、そのように扱う。
高校生の頃、僕はブラスバンドに入っていた。
そこで指揮をやらせてもらえることになった。
指揮をしていた先輩から、演奏会の直前にメンバーを集めて必ずこれを言うようにと、演奏会を成功させるための秘密の言葉を教えてもらった。
そのときの僕にはそれを言う理由がまったくわからなかった。
「そんなこと」としか思えなかった。
そこで文化祭の時、3回の演奏のうち1回を、わざとそれを伝えないで演奏をした。
すると何も間違いのない演奏だったが、ほとんど誰も感動しなかった。
きちんとそれを言うと、観客も演奏者も、とても感動する演奏会になった。
それを知って以来、僕はこの言葉を呪文と呼んでいる。
それはこんな言葉だ。
「これからする演奏はたった1度のものだ。同じお客様に聞いてもらうことはもうない。僕たちも同じコンディションでやることはもうないだろう。だから、いまの僕たちにできる最高の演奏にしよう」
これをいうとなぜかゾクッとした。
そして、その演奏にみんなが感動する。
うまいとか下手とか、そういう次元ではない何かが働いた。

No.04666 21.11.24 ノーマン

本棚の奥から「ノーマン」という漫画が出てきた。
手塚治虫が1968年に描いた作品。
読んで驚いたのは、「スターウォーズ」と似たシーンがいくつか出てくること。
デススターとそっくりな建造中の人工星が出てくるし、その中にはデススターの中とそっくりな柱状のコンピューターがある。
フォースのような超能力も出てくるし、話も五億年前の宇宙戦争について。
「スターウォーズ」がパクったのではないかと思えるほど。
もしこれが偶然の一致だとしたら、人間の深層心理にこういう元型のようなモノがあるのかもしれない。

No.04639 21.10.24 ナイト・レインボウ

本を整理していたら「Tales from the night rainbow」という本が出てきた。
No.04584に書いた「夜の虹」について書かれた本。
山崎美弥子さんに確かめたら、「はい。この本です」とのこと。
20年近く前にすでにその話に触れていたのに気づかずにいた。

No.04638 21.10.23 死ぬ暇もない

(ネタバレ注意)
007の新作を見て来た。
去年の2月に公開予定だったが、コロナの感染拡大で延期された。
ほかの映画よりずっと早く延期が決定されたので、細菌戦がテーマだなと冗談で言ったら本当だった。
「死ぬ暇もない」というタイトルなのに、最後に死んだようだ。
なのに、エンドタイトルの最後に「Bond will return」と出てくるので、頭が混乱する。
あれで生きとんのか?

No.04635 21.10.20 風のささやき

スティーブ・マックイーンが主演していた「華麗なる賭け」という映画の主題歌が「風のささやき」。
小学生の頃、うちにあった映画音楽全集の中に収録されていた。
秋になってその曲を聴くとキュンとする。

No.04625 21.10.05 映画「MINAMATA」の功罪

映画「MINAMATA」にはあきらかに事実とは違う点がいくつかある。
だから、あの映画の話がすべて史実に則っていると思うと、大きな間違いが生じる。
たとえば、チッソはユージンの現像小屋を放火したりしなかったし、ユージンを買収しようともしなかった。
「チッソという会社がとんでもないことをした」という概念を伝えるためにそうしたのだろうことはよくわかるが、してないことをしたかのように勘違いしてしまう人が現れてくるのは問題だ。
水俣にかつてそのような事件があり、それを思い出すためにはいいかもしれないが、事実誤認が大きくなると、手の付けようがなくなるかもしれない。
もしかしたらアメリカでは映画「MINAMATA」は公開されないかもしれないという。
表立った理由はジョニー・デップが家庭内暴力をしたからということになっているが、人によってはチッソから訴訟を起こされた場合、映画会社が勝てないからといっている人がいる。
水俣に興味を持った人は、きちんと事実を調べてみる必要がある。
今日のポイント、映画「MINAMATA」は面白い。でも事実とは違う。
これも正直化の一環か。

No.04622 21.10.02 魂を撮ろう

石井妙子著『魂を撮ろう』を読んだ。
よく書けていると思う。
週刊金曜日の取材で石川武志さんにお話しを聞いていたが、そのとき浮上した問題点が綺麗に書かれていた。
なぜユージンとアイリーンは離婚したのかとか、なぜ封印されていた写真が映画に登場するのかとか。
後者の問題は明確な理由は書かれていないが、状況をここまで書いてもらえばいろんな解釈が可能になり、読者がどう思うか預けてもらったという感じがして、もう充分だと思う。
石川さんからも状況は聞いていたが、雑誌の紙幅では誤解が生じると思い書かないでおいた。
映画「MINAMATA」の背景を知りたい人は読むといい。