幼い頃、お湯は母が沸かしてくれた。
高校生くらいからは電気ポットが沸かしてくれた。
だから生まれて以来、自分でお湯を沸かした覚えがほとんどない。
中学生の頃にヤカンの口に笛がついていて、湧くとそれが鳴り出すのを待った覚えが微かにある程度だ。
数年前に電気湯沸かしポットが壊れたので、以来ヤカンでお湯を沸かしている。
最初に買ったヤカンはコーヒードリップ用のヤカン。
注ぎ口が細い管で、沸騰させたお湯がそこを通っていくと少し冷めて、コーヒーのドリップにちょうどいい温度になるというもの。
しばらくはそれで日本茶も紅茶もココアも淹れていた。
すると、何を入れるかで微妙に温度を変えるようになってくる。
これが楽しいことにじわじわと気づいてくる。
日本茶のうまみを引き出すためには、一度沸騰させたお湯を少し冷まして、コーヒー淹れる時より温度を下げるといいとか、紅茶を入れる時は沸騰したお湯でとか。
紅茶を淹れるためには熱いうちと、相方が普通のヤカンも買ってきた。
電気湯沸かしポットでは、「便利」という名のもとに、こういう楽しみに気づけなかった。


