No.05296 24.10.13 見知らぬおじさん

自転車で走ろうとしたら、鍵が壊れてて開かない。
いくらやっても開かないので、自転車屋さんで直してもらおうと、後輪を持ち上げてせっせと歩いていった。
自転車屋さんまで二キロ弱。
しかし、五百メートルほど行ったところで、還暦を過ぎた僕は疲れてしまう。
それでもヒーヒー言いながら後輪を持ち上げてハンドルをヨレヨレと支えながら歩いていると、見知らぬおじさんが声をかけてきた。
「どうしたの?」
「鍵が壊れて自転車屋さんまで持って行こうとしています」
「鍵は持っているの?」
「はいここに」とポケットから出すと、パッとそれを取って後輪の鍵穴に刺す。
「何度もやったよ」と思ったが、おじさんはガチャガチャと鍵を回したりいろんなところを滅多やたらに動かしてみる。
パチン
なぜか鍵が開いた。
「アー、ハッハ」とおじさんは歩いていった。
あのおじさん、天使だなと思った。