僕はデヴィット・バーンやトーキング・ヘッズの曲をほとんど聞かなかった。
興味がなかった。
ところが、「アメリカン・ユートピア」を見てショックを受けた。
あんな演奏の方法があるのかと。
過去の映像を見ると、デヴィット・バーンはトーキング・ヘッズの頃から似たことをしていた。
それが技術の進化と、表現の深化で、まったく別物のように見えてきた。
彼が何を考えて音楽を作っているのか、知りたくなった。
でも、そのインスピレーションに導かれるようなアクションを、僕は何も起こさなかった。
「アメリカン・ユートピア」をみて一年以上がたち、忘れかけた頃にアマゾンで「おすすめの本」にデヴィット・バーンが書いた『音楽のはたらき』という明るいオレンジ色の本が表示された。
カスタマーレビューに何も書かれてないので、ちょっと不安だったが衝動的に買った。
届いた本を見て「なんでこの本を買ったのだろう?」と思ったが、読み始めると止まらなくなった。
最初の章は「逆からの創造」と題されて、演奏される場が音楽を作ることについて書かれていた。
その中に、チチェン・イッツァーのピラミッドの前で手を叩く話が出てきた。
10年ほど前にそこで僕は手を叩いた。
鳥の鳴き声のような音が反射してきた。
そのことについて「神聖な鳥ケツァールの鳴き声だ」と書かれていた。
それを知れただけでも僕にとっては天啓だ。
まだ読み終わってないこの本。
不思議な牽引力をずっと堪能したい。